Mechanical Depression
認知行動療法関連のなんかの本で、「コンピューターはうつ病に罹らない」みたいなことが書いてあった。たしか、抑うつにおける「身体性」を議論してる文章だったと思う。(認知行動療法の初期の理論で、うつなどの気分障害を「認知(≒思考プロセス)の障害」とみなしていたことへの反証。)アフォーダンス然り、心理学における「身体性」の問題は近年のトピックだったりする。心身一元論だが物理還元主義ではなく、構造(脳、身体)×機能(行動、意識)のインタラクティブとして。
ちょうどそういうところで、今月のNewtonに「うつ様の行動を示すロボット」が登場した。
報酬(電源供給)による強化学習プログラムを搭載した「ネズミ型ロボット」は、報酬の獲得(正の強化)とバッテリー消費(負の強化)のバランスを判断しながら行動(供給源への移動)を学習する。2台のロボットが用意され、「将来予測」のパラメータ(どのくらい先まで行動の結果を評価するか)だけが違う。
そうすると、先の行動をより評価をしたほうは報酬にありつけたが、対して「目先の行動だけを評価」した法は「行動しない」という選択をした。つまり、無気力状態。この将来予測というところに、脳内ではセロトニンが関わっている。(セロトニンが十分なときに、長期予測ができる。抑うつ時には、セロトニンの量が少なくなっており、短期予測に関わる領域が優先的になる。)
ネズミ、というと学習性無力感理論(learned helpnessless)を思い出すが、それは「負の強化子からの回避行動」が理論の要点で「逃げられない無力感から抑うつ」。この研究の「えさまでありつけるか」ってところだと、バンデューラあたりの「自己効力期待」と「結果期待」の関係(自己効力期待が低く、結果期待が高い場合に抑うつが生じやすい)と対照させて議論したらおもしろいかも、という雑感。
ただ気になるところは、コンピュータ・シミュレーションなのか、コンピュータ・メタファーなのか。「翻って人間の実際の行動は」ってところに持っていかないと、ただの人間機械論のままだったりする。
それと、問題は認知(≒プログラム)なのか物質(≒セロトニン)なのか、ってところ。前者だと心理療法、後者だと薬物療法、ということになる。
Newtonの記事のまとめは、結局セロトニンをどうするかの話になってたりするから、結局は物理還元なんだなと思う。(心理療法はどんなに有効でも保険効かないし、逆に効果が薄くてもお薬売ったほうが儲かるという経済原理がマテリアリズムと手を組んでる、ってところ。)
要は、人間と同じような学習機構を持ったマシンは「うつになることができる」ということ。もちろん、うつを回避するようにプログラムを書き換えることはできる(これは心理療法的)。
目の前のパソコンには無力感を感じてうつになる回路はないから心配要りません。
(逆に、どこまでも頑張り過ぎていきなり壊れるということはあります。)
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